国産車のデザインにみられる変化
日本の自動車産業は、第2次世界大戦後からデザインや技術といった多くの部分で欧米を参考にしてきた経緯があります。中には模倣ではないかと思われるようなデザインもありましたが、2017年に行われた「第45回東京モーターショー」では日本の個性が表現されたデザインも多く登場しました。
日本を代表する自動車メーカー、トヨタのブースではセンチュリーが注目を集めていました。センチュリーは1967年に登場したトヨタの最高級車。そこから現在まで1度しかモデルチェンジをしておらず、スタイリングについては初代の雰囲気を色濃く残しています。モーターショーで一般公開された新型も初代のデザインを継承しており、それが好意的に受け入れられていました。超高級車のため、多くの人にとって手の届かない存在です。そんな中で注目されたのは、独特のデザインから日本を代表する高級車だと感じ取れたからでしょう。
個性を大切にしている傾向は、トヨタ以外にも見られます。同じモーターショーでホンダが発表した「Honda Sports EV Concept」と「Honda Urban EV Concept」というコンセプトカーは最新技術を搭載しつつもムダな線を極力なくしたスタイリングになっています。アーバンEVは1972年に発表された初代シビック、スポーツEVは1965年に登場したS600クーペを彷彿とさせるフォルム。EVコンセプトは似たようなデザインも多いのですが、同社のヘリテージ(遺産)をうまく取り込んでホンダらしさを出しています。
そしてマツダの「ビジョンクーペ」にも日本らしさが込められています。以前のスポーツカーコンセプトと同じように、「艶」と「凛」という2つの日本の美意識を取り入れているのです。今回のビジョンクーペでは凛の部分を優雅な面で表現しています。欧米とは違うデザインの価値観が見られたこともあり、欧米のジャーナリストたちからの評価も高いそうです。
これまで国産車のデザインは欧米に比べて遅れているという意見もありましたが、ユーザーはそこに魅力を感じています。それに気づいたメーカーも、今までとは違う動きを見せ始めました。これからもヘリテージを活かしたカーデザインが出てくることでしょう。このデザインの変化に大きく携わっているのがカーデザイナー。機能や見た目などさまざまな観点からオリジナリティの高いデザインを作っていきます。近いうちにカーデザイナーを育てる専門職大学なども開学予定。これからますます個性的なデザインが出てくるかもしれません。